うるせえ、玉の輿。
父は虹村家が立ててくれた、簡易住宅に住んでいた。
屋根も雨漏りしていないし、ゴミだらけだったけどまあ人が住めるレベルに成長していると思った。
けれど、母そっくりに成長した私を、アル中の酔っ払いの脳みそは、母と誤認した。
なんと、私を押し倒そうとしたのだった。
「親父に押し倒された瞬間、あ、こいつ絶対に殺そうと思った。けど、それより早く、なりひらのおじさんとおばさんが窓ガラスを傘で割って、人なんて殴ったことないようなきれいな手で、親父の背中をポコポコ叩いてくれたの」
あれがトラウマにならなかったのは、駆け付けてくれたおじさんとおばさん、そして業平だ。
業平は、私の殴られてきた子ども時代を払しょくしてくれるかのように親父を殴り飛ばしてくれた。
家を壊しまくり、泣きながら私に抱き着いた。
親父が怖かったくせに、彼は私を助けるために勇気を出して飛び込んで、そして勝ってくれたのだ。
親父は前科もあったらしく、やっと塀の向こうに入ってくれた。
そのあとは私と接触禁止命令が出たらしいし、どこでどう生きてるのか知らない。
中一の13歳の時以来会っていないので、もう15年近くあいつがどうなっているのかわからない。
「だからね、私は虹村家が好きで、こうやって甘えてるの」