うるせえ、玉の輿。
だらだらと昔話をするのはあまり好きではない。
同情なんてまっぴらごめんだ。私が欲しいのは、雨が防げる家。
業平が言っていた玉の輿は、恋愛しないといけないなら面倒だ。
同情もいらないし恋愛もいらないから、私に自由をくれたらいい。
「恩義があるから愛情ではないって、言いたいんですか」
なのにジョージさんは納得できないように、持ってきた傘を握りしめる。
「貴方は愛情ではないというけど、それは紛れもなく愛情です!」
「えー……。なんで他人の貴方がそこまでそう思うの?」
「だって、貴方を見ていたら分かります! いつも虹村社長を第一にしている」
第一にしているかもしれないけど、でも陰ではプロレス技で結婚を承諾させたりしてるんだよ。
「うーん。じゃあ別に業平が好きでもいいよ」
「別にって、貴方の気持ちでしょ。なんでそんなに投げやりなんですか」
ジョージさんは、私よりも自分のことのように眉を下げる。
捨てられた子犬のようなまなざしだ。ガチムチ筋肉のくせに。
「私が業平を好きだから、貴方を好きになることはない。貴方は、私に振られる理由に、敵わない相手である業平を出したいだけ」