うるせえ、玉の輿。


二階に上がると、ドアノブのない業平の部屋のドアが、キイキイと揺れていた。

中を覗くと、気持ちよさそうに眠っている業平の姿があった。

195センチのクマのぬいぐるみを抱きしめて、笑っている。

あーあ。せっかくのチャンスだったのに、なんで失敗したんだろう。

「あ……んっ だめよ、そこ、いやん」
「……いや、寝言の内容がやばい」

驚いたけど、ごろんと寝返りを打ったために割れた腹筋が見えた。

いくら筋肉があってもお腹を出して寝たら風邪ひく。
いつも全裸で眠ってるらしいから、部屋の温度調節は完璧だろうけど今、ドアノブがない分、その空間から冷気が入ってきている。


仕方なく、布団をかけてあげた。

「……んん。麻琴ちゃんっ」
「ぷぷ。何」

寝言に答えてはいけないって、業平のお母さんが言っていたけど、ついつい返事をしてしまう。

「ああ、んっ。麻琴ちゃん、貴方、も、きてえ」
「ん?」
「丞爾くんと二人で、私と――」

すうっと寝息が聞こえてくる。

中途半端に寝言を言うと眠ってしまったようだった。

ジョージくんと私と?

首を傾げる。三人であんあん言ってどうするつもりなんだろう。
分からずに、私は首を傾げたが、彼のお腹に布団をかけたら寝た。


そして朝起きると、すでにジョージさんは帰ってしまっていたのだった。
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