うるせえ、玉の輿。

「あー、届いたかなー。麻琴ちゃん、印鑑出してくれるかい?」
「私、出ません」
「え?」

社長が老眼鏡をずらして私の顔を見る。

「私、一身上の都合によりフラミンゴ急便の彼とは距離を取っております。あの人の対応はしません」
「ええ、困るよー。もう年間契約しちゃったよ。『月間:造園の友』」

つまり、最低でも一か月に一回はあのトラックの彼が、うちに来るということか。
最悪だ。

「えっと印鑑は、いつもの場所です。私はお茶の葉と皆さんのおやつを買ってきますね」

よいしょ、と給湯室の窓から逃げたのと彼がインターフォンを鳴らしたのは同時だった。

事務所は玄関のすぐ隣にあり、玄関から直接荷物を受け取れるように玄関側に窓がある。
なので、事務員である私がそこにいたら嫌でも彼に姿を見せてしまう。

残念ながら、業平がジョージさんを好きな限り、私は彼の気持ちにこたえる気はない。

そもそも業平以外は、ゴリラか野蛮人か野菜にしか見れない。

窓から逃げたので、紺のスキニーパンツが汚れてしまったので手で払う。

業平が段ボールいっぱいくれた服や下着は、高そうだから着るのを躊躇してたけど窓から降りるのに動きやすい。

やはり高級な服は素材からして違うとしみじみ思う。
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