うるせえ、玉の輿。
「虚しくないの。脅して」
「虚しいし格好悪し情けないですよ!」
力説した彼は、その気迫でシャツが破けてしまいそうだった。
「でも、そうでもしないと貴方は俺のことを見ないから。意地でも見ないから。頑なに誰の子とも見ないから」
苦渋の選択だと言わんばかりに、彼は財布から名刺を取り出すと、携帯に何か打ち込みだした。
「お客様である虹村社長に個人的にお電話するのは気が引けるのですが、しょうがない。クビ覚悟で今から社長に電話します!」
「まって、あ」
というか、まだ二人は連絡先を交換してなかったんだ。
百戦錬磨そうな顔の業平が、本命相手に連絡先も交換していなかったなんて。
これは、電話させて業平の携帯に、彼の電話番号の履歴を作るべきじゃないかなあ。
「いいよ。どうせはったりでしょ? してみれば」
「はったりじゃ、ないです。します。しますから!」
「はやく、ほれほれはやく」
私が嗾けると、指を震わせながら通話ボタンを押した。
よーし。ジョージさんの番号ゲットだ。
「ああ、やめて。やっぱりやめて」