うるせえ、玉の輿。
「あなた、本当に荷物はこれだけなの?」
段ボール一個とボストンバック一つと日除けの麦わら帽子の私を見て、業平は驚いていた。
「うん。築30年のアットホームな日本家屋でルームシェアしてたから。冷蔵庫もテレビも備え付け、冷蔵庫もあったし。お風呂は大家さんが女の子だからって家の貸してくれたし。あれで月二万なんだからやばいわあ」
「貴方の思考がやばいわよ。まあ客間はあなたが好きに使えばいいわ。私、もう行くから」
「うん。気を付けて」
業平はオレンジ色の頭をワックスでまとめながら、茶色のジャケットに香水も吹きかけて、忙しそう。
電話台の横の、宝箱みたいな箱を開けて並んである眼鏡を見て驚いた。
度は入ってない眼鏡が、こんなに何個もいるのだろうか。
「彼が来たら、私からですって飲み物とクッキーを渡してちょうだい」
「へいへい。クッキーはどこ?」
紫のフレームの眼鏡に決めたらしい業平は、冷蔵庫を開けた。
「ここのクマさんの柄の入れ物に入ったやつよ。あと冷蔵庫の中のものは好きに食べていいけど、洗濯機は触らないで。繊細な洗い方とか色別とか貴方、絶対守らないから」