うるせえ、玉の輿。
「二人の時は、社長じゃなくていいよ。一応、お前が人妻モデルと不倫する前まで共同経営って形だったでしょ。あと二人ともパス」
一人ひとり書類をチェックしないといけないのか億劫だけど、この中でシンデレラになりたくて頑張ってる女の子たちがいると思うと原石を探すのは悪くない。
「あんときは、まじ悪かったよ。ってか、なんで駄目なんだよ」
「絶対、あんた手ぇだしてるでしょ。あんたが食べた女の子なんて、トラブルの元よ。絶対に嫌だ」
「ばれた」
井伊直澄。大学時代に知り合ってしまった悪友。旧財閥の祖父と華道の家元の母親を持つサラブレット。性格さえ、うんこでなかったら……麻琴ちゃんのお婿候補にしてあげたのに。
「お前、どんな女がタイプなんだよ。この前までしつこかった女、寝たんだろ」
「仕事中じゃなかった?」
「まじで男が好きってわけじゃねえよな。あの汗臭そうな配達のさあ」
「丞爾くんは、私のエンジェルなの! 汚らわしい話題に名前を出さないで」
ムキになって怒ってしまうと、直澄は口笛を吹く。
「幼馴染ちゃんのお婿さん探しだっけ。あれまじ? 俺には業平が男を口説いてるようにしか見えないけど」
「……」
それでいい。私は『バイ』なのだから、男も口説いていないといけないもの。