うるせえ、玉の輿。
「か、身体で、ですか」
さあっと丞爾くんの顔色が変わった。
「ええ。意味が分かるわよね? 場所を選ばせてあげるわ。私の家か、貴方の家か――駅前のグランツェってクラシックホテルか」
「でも! 俺!」
「――私の仕事場で大声出さないで頂戴」
ぴしゃりというと、今にも泣きだしそうな子犬は小さく鳴いた。
「おい、業平しゃちょー。話終わった? メシ、食いに行こうぜ」
「副社長さんっ こんにちは」
「……だっせ」
直澄は、ノーブランドだろう丞爾くんの全身を見てから馬鹿にしたようにつぶやくと、先に車を取りに駐車場へ向かってしまった。
「ごめんなさいね。彼、女にしか興味なくて」
「いえ。副社長さん、いっつもお洒落で格好いいっす。では、駅前で、何時にしますか?」
怯えたり、冷たい目線になるかと思ったのに、意外にも丞爾くんはあっけらかんと聞いてきた。
「まあ、20時でも大丈夫?」
「はい。明日は8時なんで」