うるせえ、玉の輿。
一応、性的な、エロイ雰囲気を出したつもりだったんだけど。
普通、ノンケの男ならはだしで逃げ出すし、女ならウキウキしちゃうと思うんだけど。
「丞爾くん、私のこと好きなのかしら」
勝手に運転席に座っていた直澄には目もくれず、助手席に座ると独り言をこぼす。
ありえるわ。彼、先日、私の肌が綺麗だって言っていたものね。
「なあ、ランチどこがいい?」
「ちょっと。たらしでしょ。自分で考えなさいよ」
「じゃあ、そば」
「そばは駄目。忘れてたわ」
「この野郎。舌入れてチュウすんぞ」
直澄のセクハラを片手で追い払い、BGMを消すと、私は麻琴ちゃんに電話をした。
『ほい』
「あら、麻琴ちゃん。今、お昼かしら。あのねえ、夜ご飯いらなくなっちゃったんだけど」
『えー! そばがいいって言ってたじゃん。もうそばの麺、寝かせてるよ』
いやだ。麻琴ちゃんったら、麺手作りなの?
それはすごく食べたい。