伝えたい。あなたに。"second story"
『ゆうか、入るよ?』



『うん。』



『熱は下がったのね。よかった。』



『点滴したからね。』



ベッド脇の椅子に座る。



『お父さんとお母さんから、話があるの。』



..................



終始黙ってうなずくゆうかは、悲しげだった。



『わかってる。今のままじゃ、何もできない。だから、、』



『すべてがなくなったわけじゃないわ。もう一度、ゆっくり新たに始めよう。』



ゆっくりと瞬きする目から、涙がこぼれた。



ゆうかを優しく抱きしめる。



『お母さんたちのこと、許さなくてもいい。でも、あなたを世界で一番愛してること、知っていて欲しいわ。』



少しだけ荒い呼吸が伝わってきた。



『父さんも母さんも、ゆうかのことが一番だからね。今更かもしれないけれど、ゆうか、もっともっとそばにいるべきだった。本当にすまなかった。』



健治さんはゆうかに深く頭を下げた。



『お父さん、お母さん。お願いがあるの。』



『なんでも言ってごらん?』



『私の面倒を見てくれた家政婦さんが、病気みたいなの。治療するお金が足りないっていうから、少しだけでも助けてあげられないかな。私が働いてそのお金は返すから。』



確かに、家政婦だった小村さんは末期の癌だった。



『どうして?あんなことされたのに。』



『思い出したの、私のために用意されたお菓子を小村さんの息子さんが食べちゃったことがあったの。その時、小村さんすごく怒って。それが嫌だった私は、息子さんのことをあからさまに邪険にしてた。私が先にあの人を傷つけたの。だから、もう同じことは繰り返したくない。』



『そうだったの。』



ゆうかは泣きながら体を震わせた。



『ごめんなさい。お父さんお母さん。』



『あなたが謝ることじゃないわ。私達の責任だから。』



『よし、わかった。かかる費用、私達が全額負担しよう。』



『ありがとう、お父さん。』



『今はゆっくり身体休めて。』



『うん。』
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