伝えたい。あなたに。"second story"
7日目。



今日で最悪の1週間が終わる。



結局、微熱はずっと続いた。



頭痛は治ったり、再発したりを繰り返していた。



『こんにちは。』



マニュアル通りの挨拶で入ってくるのは佐々木先生だ。なんだか、いつもより機嫌が悪いように見える。



この頃、私のそっけなさは増していた。
ほとんど目を合わせない。
 

そろそろブチギレられるかもしれない。
いつものように聴診が始まる。



なんだか雑だった。



『あの、痛いです。』



思わず口にしてしまった。



間違いだった。



『なに?』



その一言で、イライラが伝わってくる。
地雷を踏んだかもしれない。



『ここ数日、なんなの?態度悪いし、いい加減にしてよ。君みたいな患者一番嫌いなんだよね。』



それはこちらのセリフだ。



『だって、、痛かったから、、』



『バンッッ!』



机を叩く音に、体が震えた。



『生意気だな!患者が医者にでかい口叩いて良いと思ってんのか!病院でぬくぬくしてるやつに何がわかる!』



部屋中に響き渡った。



怖い。




体中の震えが止まらない。




どうしよう。



『ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい!』



必死で謝った。


『ふざけるなよ。』



そして、乱暴に扉は閉められた。
何事かと、他の看護師さんが入ってきた。




胸が鷲掴みにされたように苦しい。



『はぁ、、うぅぅ、、』



布団に顔を埋める。



こんな顔見せられない。



肩で息をする。



怒鳴り声が、頭を何度もリピートする。



『ゆうかちゃん大丈夫?苦しい?』



ナースコールを押そうとする看護師さんの手を抑える。


『呼ばないで!だめ!』



『ゆうかちゃん?』



あの顔はもう見たくない。



『呼ばないで、、お願い、、大丈夫なの。』



こんな大丈夫に説得力はないかもしれない。



その時。



『どうした?』



広瀬先生の声だ。
言葉を発せられない。



ただ、ベッドの上で身を丸めている。
ギュッと目をつぶって。
いつしか苦しかったときよりずっと、ずっと。



『ゆうかちゃん、胸苦しい?横向きになれないかな。苦しいのとろうね。』



体に力が入らなくなってきた。



ただ、苦しい。
でもまだ、体は震えてる。
聴診器が入れられるのが怖い。
拒んでしまう。



演技、生意気、ふざけるな。



頭から離れない言葉。



周りの音が何も聞こえない。
異常なほど速い鼓動だけが、聞こえる。



真っ暗闇の世界に、たった一人で残されたみたいに。
頬に一滴のしずくが流れた。














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