伝えたい。あなたに。"second story"
『少し休もうか。』



涙を拭いて、横にさせる。



あまり顔を見られたくないのか、背けている。




『その前に胸の音聞きたいんだけど、いい?』



その瞬間顔が強張るのに気付いた。



胸元をギュッと押さえている。



『どうしたの?強くしないから、大丈夫だよ。』



そう声をかけても、体は一向に動かない。



『苦しくなるからしたくない。』



トラウマになっていたのか。



無理にすれば余計に逆効果だ。



『背中だけでもいいよ。』



それでも動かない。



だめか。



『ゆうかはどうしたい?』



『怖くないようにしたい。』



『うん、怖いんだね。じゃあ先生に背中向けて良いから、少しだけ聞かせて?』



すると渋々手を離した。



聴診器を持った手を伸ばす。



けれど。



その手はすぐに止められた。



『やっぱり無理。』



そう言って押さえた手もわずかに震えている。



震えた手をギュッと握る。



これまでも、一度経験した恐怖感やトラウマは何度もフラッシュバックして辛い思いをすることが多かった。



どう寄り添えば良いのか、考えれば考えるほど、わからなかった。




自分がこの子の将来を背負っていけるのかと不安に思った。




『がんばる、でも、ちょっと待って。』



ゆうかが発したのは意外な言葉だった。



『うん、待つよ。ずっと待ってるから。』



辛い中でも少しずつ前に進もうとしていた。










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