伝えたい。あなたに。"second story"
『山瀬先生どうでしたか?』



ゆうかの状態を心配した広瀬先生が声をかけてきた。



『うん、なんとか大丈夫そう。』



『診察させてもらえました?』



『させてもらえました。本当によかったよ。まだ気は抜けないけどね。』



それを聞いてパッと顔が明るくなった広瀬。



相変わらず子供みたいな反応だ。



『おぉー流石、山瀬先生ゆうかちゃんの心の開かせ方を知っていますね。』



『おぉ、じゃないよ。出張帰りなんだからいたわってよ、時差ぼけがひどい。』



『僕が山瀬先生のカウンセリングしましょうか?』



そう言いながら肩を揉んでくれるのは、広瀬なりの優しさだと思う。



『ばかにしてるのかー。』



『してませんよ。そんなことより佐々木先生、田辺先生の元で研修しているらしいですよ。』



『田辺先生?それは良いことじゃん。』



田辺先生というと、院内でも恐れられている強面ドクターだ。いつも厳しくあるが、筋が通っているから親しむ人は多い。自分もその一人だった。


『でもなんで突然?』



『田辺先生が今回のこと聞いて、佐々木先生を自分が引き受けると申し出たらしいですよ。まあ、佐々木先生自身は何も言えないでしょうね。患者に罵声を浴びせた罪は大きいですよ。』



『田辺先生も寛容だね。俺なら、一発パンチしてるかもしれない。』



まあまあと、肩を叩かれる。



『山瀬先生もよく抑えましたよ、僕あの事件の直後のとき腹わた煮えくり返ったんですから。まあ北見先生が何を彼に言ったかは想像も出来ませんが。』



『俺も一度行こうと思ったけど、感情的になったら困るし、それよりゆうかの状態を診るほうが優先だと思ったから。』



『それは賢明な判断ですよ。』



自分の行動がゆうかの不利益にならないよう、そして、誰よりもそばで寄り添える存在でなければいけないと思った。



『あと、昨日ゆうかのこと診てくれてありがとね。広瀬先生だったからなんとかなった部分もあったと思うから。』



『当然ですよー、僕もゆうかちゃんの担当医ですから。』
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