伝えたい。あなたに。"second story"
数十分後、、、。



宮本さんがやってきた。



『ゆうかちゃん、検査大変かもしれないけど、頑張ろうね。』



『大変?』



不思議な空気が流れる。
宮本さんはなぜかハッとしている。



『とりあえず行こうか。』



なんだか嫌な予感がしつつも、ついていく。
心電図もX線も何ともなかった。



『もう帰っていいの?』



宮本さんに聞いてみる。



『もうちょっと待っててね。』



『お待たせー、準備できた?』



宮本さんと入れ替わるように入ってきたのは山瀬先生だった。


『終わったよ。どうしたの?』



『終わってないでしょ、これからやるんだから。』



きっと今の私にはクエスチョンマークがついていると思う。



『立ってないではやくして?先生回診の時間なんだから。』



『何するの?』



それを聞いて先生は目を点にする。



『何言ってんの骨髄検査まだやってないでしょ?』



えっ。



聞いてないのに。



『先生言ってたけど?聞いてなかったはなしね。』



『先生伝えてたんですね。』



宮本さんが言う。
肩をがっくり落とす。



幸せなひと時はここで終わり。
地獄の時間が始まる。



『はぁ。やだなー。』



ため息が漏れる。



『もう、、終わりだ、、。』



『はぁ。なんでこんな目に合わなきゃいけないのさ。』



『なにぶつぶつ言ってんの。始めるよ。』



何とかして痛みを逃す方法がないものか。



何度も深呼吸をしてみる。



『そんなたくさん息しないで、過呼吸になるよ。』



失敗。



深呼吸になっていなかったみたい。
山瀬先生をじっと見てみる。
怖いから今まで、処置の前も最中も見たことはなかった。



『いつもそんな見てたっけ?やめときな。』



失敗。



枕に顔を埋めてみる。
現実逃避だ。



『そんな寝方したら苦しいでしょ、呼吸わからないから顔は横向いてて。』



失敗。



何もかもだめ。



はぁ。



はぁ。



もうだめだ。



この世の終わりとばかりに脱力する。
ゆっくりとまぶたをおろす。
力が入ってると余計に痛いのは知っているから。



検査の間だけでも、幽体離脱したい。
そんな特技があったら。
どんなに幸せだろうか。



痛みや苦しさから解放させてくれる魔法があったら、どんなに日々が楽しくなるだろうか。



きっと同じ気持ちの人はたくさんいる。



私よりもずっと痛みに耐えながら生きてる人はいる。




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