伝えたい。あなたに。"second story"
『ゆうかちゃん、今日よく頑張ったね。山瀬先生褒めてたよ。』



いつのまにか戻ってきていた宮本さんが言う。



そんなことで褒められるなんて、しかも、それを伝えてくれる宮本さんにも気恥ずかしい感じがしてしまった。



『涙の跡が、、拭いとこうか。』



まるでお母さんのように接してくれる宮本さんには感謝しかない。



『ありがとうございます。』



『いいよ、じゃあお部屋戻っててね。』



帰り道、久しぶりにプレールームを覗いてみる。



もちろん遊ぶ気なんてない。



見覚えある子供達ばかり。



ここの病院に入院する子はすぐに退院できる方が少ない。



私もその一人だった。



ここで遊んだ記憶こそあまりないけれど、感慨深いものがあった。



『ゆうかちゃん、何してるの?』



振り向くとそこにいたのは知らないドクターらしき人だった。



『こんにちは。』



戸惑いながら言ってみる。



『こんにちは、申し遅れました。院長の川金(かわかね)と申します。』



『高島ゆうかです。初めまして。』



『私はゆうかちゃんが赤ちゃんの頃よく見てたよ。でも、初めましてだね。よろしく。』



この人が噂の院長か。



お母さんと仲良くしている。



『ゆうかちゃん、大きくなったね。体調も良好とのことで安心したよ。』



『はい、山瀬先生達のおかげです。』



『そうかい、そう言ってもらえるとうちのスタッフも喜ぶよ。立ち話は体が冷えるからそろそろお暇しようかな。あ、遠慮なくプレールーム使ってねー。』




笑って流したけれど。



私の生態は筒抜けのようだ。



病院のスタッフ皆から、あの子はいつまでも小児科を卒業できない、お子ちゃまと思われているのだとしたら。



うろうろする気にはなれなかった。



大人しく戻ることにする。



すると、病棟の廊下に小さくうずくまる女の子がいた。


おそらく小児科の子供だろう。





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