伝えたい。あなたに。"second story"
自分の部屋までの道のりは長い。



大丈夫と言いながら、
異様に遅く歩く私を不思議そうに見ている。



医者が大丈夫といったんだから、大丈夫なんだろう。
と思っているのだろうか。



支えてくれていた看護師さんに言う、



『もう大丈夫です、自分で戻れますから。』



そういうと頷いて、さっと離れていった。



でも、、



じわじわと感じる胸のあたりの違和感。
さっきの一瞬の痛みを思い出させる。



しかも、目の前には最後の難関である階段。



ふぅ、、。



これは時間との戦いとも思える。
今度こそ階段から落ちれば、命はないかもしれない。
手すりをしっかり掴み、確実に歩みを進める。



一段上がるごとに、強くなっていく痛みは次第に私を支配していた。たった5段しか進んでいないのに、全身が汗でびっしょりだ。



あと6段。



5段。



4段。



3段。



ううっ。



自分で発した声とともに、階段に座り込む。
顔に汗が流れるのがわかった。



目を固くつぶり、痛みの波が引くのを待つ。



長い。



はぁぁーー。



たくさん息を吐く。
もう一度足に力を込める。



決して踏み外さないように。
登り切ることができた。



なんとか部屋の戸をあける。



『あ、いた。どこいって、、、』



そこにいたのは山瀬先生だった。



『あ、あの。』



ごまかせるわけがない。



『ちょっと、どういうこと?』



力が抜けて床に座り込む。



ゆっくりと、そのまま突っ伏した。



床だろうと関係ない。
もう力が入らない。



『ゆうか、どうしたの?大丈夫?』



すぐに聴診器が入れられる。



『なにこれ!』



山瀬先生の声とともに、
周りが騒がしくなった。



自分でも見ていないけど、どうなっているのだろう。









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