伝えたい。あなたに。"second story"
肋骨。



幸いにも折れてはいなかった。



打撲といったところだろうか。



脳にも問題はなかった。



ひとまず胸を撫で下ろす。



コンコンッ



その音に振り向くと、宮本さんが少しだけ顔を出していた。


『どうしました?』



申し訳なさそうに入ってくる。



『実は看護師達から聞いたんですけど、階段から落ちたの、小児科の子が階段に走っていったのを止めようとして、足を滑らせたようです。

当の本人はゆうかちゃんがキャッチしたおかげで、なんともなかったんですけど、、、。』



『階段から落ちたのに、俺に連絡しなかったの?』



宮本さんのせいではないけれど。



『すみません、その後もう一度階段から落ちて、たまたま居合わせた佐々木先生が見てくれたんですけど、大丈夫そうだから、部屋に送っていっての一言で。』



『もう一度階段から落ちるってどういうこと?』



『何が起きたかはまだ分からなくて。』



『そうだよね。ありがとう。』



佐々木がたいして診察もせず、大丈夫と言ったことにも呆れるが、それ以上になんの連絡もせず放置したことが許せなかった。



小児科の看護師長に連絡を入れる。



ゆうかの検査が終わる前に、状況を把握したかった。





『それで、、連絡が遅れたと?』



『申し訳ありませんでした。』



佐々木の判断はともかく、激昂した母親の対処に追われて、患者の対応を蔑ろにすることが許されるのか。



感情的になるのは好きじゃない。



『患者の容態を過小評価することほど、危険なことはありませんよ。以後、気をつけてください。』



怒りのオーラは出してきたつもりだ。






ポケットに入った外泊許可の紙が紙切れになった。



はぁ。



なんでこうも上手くいかないのか。




ベッドに眠るゆうかを見て悔しくなった。



でも、階段に走る子供に手を伸ばしたのは、ゆうかの意思だろう。



『ごめんな。』



そんな言葉しかかけてやれなかった。







< 40 / 243 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop