伝えたい。あなたに。"second story"
夕食の時間。



久しぶりに家のご飯を食べる、やけに豪華だ。



知らない人も何人かいる、隣の会社の社員さんだろうか。



そんなに食べられないから申し訳ない。



それ以上に、隣に山瀬先生がいることが気に入らない。



家族でご飯を食べられたらどんなに幸せだろうと思ってはいたけど、これは違う気がする。



食べづらい。



なぜなら、私が山瀬先生に見られながら食事をするのは食べなくて怒られているときか、好き嫌いをしているときくらいだからだ。



『なんで隣?』



『良いでしょ、お母さんが。』



お母さんか。



はぁ。



『ため息つかないでよ、美味しそうじゃん。』



『今日の主役は誰?』



『ゆうかじゃない?』



『いや、山瀬先生でしょ、招かれてるんだし。』



『そう、でも誕生日の人がいるみたい』



テーブルがカオスと化して何がなんだかわからない。



主役の人が手をつけるまでは食べ始めない。



それがマナーだ。



でも、みんな誰が主役かわからないから、誰も食べ始めない。



お母さんなんとかしてよ。



すると食事に来ていた社員さんの一人が口を開いた。



『今日はゆうかちゃんが、久しぶりに家でゆっくりできるということで、遠慮なく召し上がってくださいね。そのスイートポテトは僕が作りました。』



『ありがとうございます。いただきます。』



みんなが食べ始める。



あまり箸は進まない。



『無理しないでね、人数もなかなかいるし食べられなくても気にすることないわ。』



母がボソッと言った。



少し心の紐が緩んだ。







< 43 / 243 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop