伝えたい。あなたに。"second story"
久しぶりに10時を過ぎても起きていた。



いつもは静けさに寂しくなって寝てしまうから。



微かに人の話し声が聞こえる。



お母さんらしき声も。



ふぅ。



やっぱり家はほっとする。



自分のうちの匂いや、壁の色。



やっぱり自分の家が1番だと思った。



ただ、少しだけ寝るのが怖い。



お母さんが言っていた通り、発作は夜に出ることが多いから。


病院ではすぐに来てくれるけど、ここではそうではないし、まさか夜中に山瀬先生を呼ぶなんて忍びない。



出来るだけ、部屋を加湿して乾燥しないようにする。



薬と念のため、スマホも手の届くところに置いた。



よしこれで大丈夫。



退院生活への第一歩ってところかな。



ベッドに入って温まってると、


コンコンッ


『山瀬先生、入っていい?』


うわ、夜に襲いに来たんだ。


『だめ!』


ガチャッ


『ダメって言ってるのになんで入ってくるの。』


『起きてるか確認しただけ。大人しく寝ようとしてたのね。』


山瀬先生は何を考えてるかわからない。


『そうだよ。』



『気合い入れて薬もスマホも準備してるけど、先生の連絡先知らないでしょ。』



あっ、そうだった。



『電話かけるから登録して。』



『うん。』



ん?



なんで私の電話番号知ってるの。



『できたよ。』



まあいいや。



多分お母さんだ。



『夜も変だと思ったらすぐ連絡して、わかった?』



『わかってるよ。』



自信はないけど口だけは言っておく。



そして診察をして帰っていった。





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