伝えたい。あなたに。"second story"
『ゆうか、そろそろ時間じゃない?』



お母さんの声で目を覚ます。



なんとなく、体の怠さが増しているような気がした。



『ゆうかちゃん、一応熱測っておこうか。』



香奈さんが言う。



表示されたのは
    38.6の文字



『上がっちゃったね。山瀬先生に怒られちゃうかな。』



『ううん、楽しかったからいいの。ホラー映画に比べたら、山瀬先生は怖くないから。』




だんだん基準がひねくれてきている。



『山瀬先生ってどんなふうに怒るの?お母さん興味ある!』



熱が出てることなど、おかまいなしのテンションだ。



『顔は笑いながら、内容は怖い。怒られてるって感じ。』



『そうなの、でも、本気で怒ってくれるのは山瀬先生だからよ。感謝しなきゃね。』



『うん、感謝してるよ。』



再び病院に戻る時間になった。



体が重くて、早く戻りたい気持ちもある。



しんどい。



荷物もすべてお母さんや香奈さんが準備してくれた。



『お母さんも、香奈さんも本当にありがとう。』



『いいえ、ゆうかちゃんまたホラー映画見ようね!』



なかなかマニアックなお誘いだと思う。


『はい!』


『ゆうか、山瀬先生によろしくね。またオーストラリアに行ってくるけど、良さげな人形あったら買ってきてあげる。』


『うん、わかった。』


人形をお土産にするなんて、やっぱりお母さんの中でも私は子供なんだなとつくづく思う。
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