伝えたい。あなたに。"second story"
夕方5時。
PHSが鳴った。
ゆうかが目を覚ましたとのことだった。


コンコンッ



『ゆうか、体調どう?』



明らかに不機嫌そうにしている。



『別に。大丈夫。』



返答に別にがあるときは、慎重にならなければいけない。



出張の前日にこんなことになってしまったことは、紛れもなく自分の配慮の足りなさだ。



『ごめんね、ちゃんと伝えておけばよかったのに。』



『ううん、なんともない。』



その言葉はか弱く発せられる。
顔色も完全に戻ったわけではない。



採血に失敗すること、それは痛みだけじゃない。
ゆうかにとって、恐怖心やトラウマを増やす火種になる。



『不安なことあったら教えて?先生からも伝えておくよ。』



首を横に振る。
近づいたはずの心が、離れた気がした。



『しんどかったよね。また我慢させてごめんね。』



『いいの。終わったことだから。
でも、、』



『でも?』



『山瀬先生いない間、代理の先生に佐々木先生ってあった。なんで?』



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