シンデレラは王子に攫われる
昔々あるところに、シンデレラという女の子がいました。シンデレラは継母とその連れ子である姉たちに意地悪をされていましたが、舞踏会で美しい王子様と出会い、恋に落ちます。そしてーーー。

物置を掃除していたら、幼い頃に読んでいた懐かしい本が出てきた。水色の美しいドレスを着たお姫様が表紙に描かれている。シンデレラだ。

「好きだったな……。懐かしい……」

山中麗美(やまなかれみ)はそう言い、ページをめくった。絵本は古びていて埃だらけだったが、綺麗な絵であることに変わりはない。

「シンデレラはいつも最後は幸せになれるんだね……」

ガラスの靴を履いて舞踏会に行って、王子様と最後は結ばれる。そんな幸せを幼い頃は夢見ていた。でも、大きくなった今は違う。

「麗美!掃除にいつまで時間がかかっているの!?早くしなさい!このグズ!それが終わったら私の友達に出すケーキを作りなさいよ!!」

怒鳴り声が聞こえ、麗美は慌ててシンデレラの絵本を元に戻す。そして「わかっています!」と言い、素早く掃除を済ませた。
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