シンデレラは王子に攫われる
「きゃあ〜!!愛叶〜!!」

ライブ会場にいるかのように姉が叫ぶ。テレビ画面には、永島愛叶(ながしままなと)がアップで映されていた。RIPのリーダーでドラマにもよく出演している。

「愛叶くん、すごいな……」

麗美は愛おしげな目で画面を見つめる。愛叶とは保育園から一緒の幼なじみで、いつしか愛叶に恋を麗美はしていた。

「俺、東京に行ってアイドルになる」

高校生の時に言われ、麗美はこの気持ちを泣く泣く胸にしまった。でもそれでよかったのかもしれない。自分の存在があれば、愛叶は豪華なステージには立てない。

「ありがとうございました!!」

歌い終わり、お礼を言う愛叶は童話の王子様のようだ。何百人もの人が歓声を上げていて、手を振っている。

麗美は、その様子を画面越しでしか見られないもどかしさと、愛叶が夢を叶えた嬉しさでいっぱいだった。



十二時。シンデレラの魔法が解ける時間。ようやく麗美も自分の部屋で休める。と言っても物置部屋と対して変わらない部屋なのだが。

古いベッドが、麗美が横になるとギシッと軋んだ。いつもならこのまま眠ってしまうが、今日は何となくまだ眠りたくない。
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