白と黒
電話の向こうの男はドスをきかせた声で言った。

「おい!てめえ!誰だかしんねえけど、勝手に俺の女と口聞くんじゃねえ!」

俺をびびらせようとしたみたいだが、その声のおかげで、謎は解けた。

「おう!フミヤ!合コンの相手、黒川だったのか?」

そう。その男の声は間違いなくフミヤの声だった。

「あれ。あっさりバレた?そうなんだよ!高校聞いたら南沢だって言うから、ノリの事、知ってるかって聞いたんだよ!そしたら好きだったってさ!」

電話の向こうで「なんで言うのよ!」と黒川が怒っている。

「知ってたよ。俺も好きだった。でも、その時俺には彼女がいたんだ。」

俺はあの時、周りの目を気にして、自分の気持ちに嘘をついていた。
卒業式の1ヶ月ほど前、学年一の美少女と言われていた女の子から告白され、俺は受け入れた。
本当は黒川が好きだったのに…。
卒業式で黒川が話し掛けてくれた時は、自分の気持ちを必死で押さえ込んだ。
黒川への想いを心の闇に閉じ込めたんだ。
付き合い始めたばかりの彼女をふるのは気が引けたから。
結局、周りの目を気にしていただけだ。
その後、彼女は俺が自分の方を向いてくれないのを察して、二ヵ月も持たずに別れを切り出した。
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