ねえ、理解不能【完】







心臓がドクンと脈打って、
一歩後ずさりしてしまう。





視線をすべらせた後、千草の顔が斜め後ろで停止して。






千草の瞳と私の瞳があわさる。

目が合ってるのか正しいことは分からないくらいの遠さなのに、確信があった。




時として、一秒とほんのすこし。


千草の表情まではうまく読み取れないけれど、どうせ今の千草が何考えてるかなんて近くにいたって分からないんだろうなと思う。



私はムッとした表情を瞬時に作って、この一瞬だけは強かな女の子になりたくて、頑張る。


そうしたら、千草はすぐに私から視線を外して前を向いた。



何事もなかったように。私なんていなかったみたいに。




私は我に返って千草の隣にいる広野みゆちゃんに視線をうつす。


千草を見上げて話しながら可愛く笑ってる。それに千草が頷いた。それから、信号は青になり何事もなく二人は歩き出す。







.......よかった。






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