ねえ、理解不能【完】
ベッドに仰向けになって、天井を見上げる。
天井の壁紙は、本物の青空みたいになっていて、小さい頃からのお気に入りだったりする。
嫌な現実から目を背けたくて、偽物の青空を見つめる。
この部屋と千草の部屋だけで世界が完結していた小さい頃。他の人なんて考えることなかった。二人だけでいいのに、そんなこと一度も思わなくてよかった。
昔は千草もよくこの部屋に遊びに来ていたのに、中学生の半ばになって徐々に来なくなっていった。
二人でベッドに仰向けになって、この作り物の空を見上げていたことを思い出す。秘密の話とか、未来の話とか、話してたこと覚えてる。
私の部屋にまだ青空があること、千草はもう忘れちゃってるかな。楽しかった記憶とか、そういうのも全部。
もしも、気持ちに合わせてこの天井の空色が変わるなら、きっと今は雨模様だ。
「あーあ、」
青空を頭の中にしまいこんで、目を瞑る。