ねえ、理解不能【完】
きゃはは、
なんて、広野みゆちゃんが可愛らしく笑う声。
耳をいやらしくなでるみたいなトーン、私はあんまり好きじゃない。
一度聞こえてしまったら、
その後は嫌でも聞こえてしまう。
人間の心理は、そんなものだ。
好きになってしまったら、どんなに嫌いになりたくても気持ちが消えない、みたいな感じだと思う。経験したことはないけれど、なんとなく分かる。
広野みゆちゃんは、千草のことが好き。
だから、心の底から幸せ、みたいな可愛い顔をして千草に笑いかけている。
一方の千草は、顔は穏やかなものの、口を開いている様子はなくて、広野みゆちゃんの話をただただ聞いてる模様だ。
緊張、しているのかな。
広野みゆちゃんみたいな可愛い女の子だから。何話せばいいか分からなくなったりしてるのかな。
ただめんどくさいだけならいいのに。
広野みゆちゃんの声、やっぱり不愉快だ。
このままカーテンの隙間から覗き続けるのも情けなくて悲しくなってくるから、カーテンをしっかりしめて窓の外が完全に見えないようにした。