ねえ、理解不能【完】
それから、携帯の音楽アプリを起動させて、ロックバンドの曲を選択する。
イヤホンじゃなくて、部屋いっぱいに響くように音量は最大にして、もう一度ベッドに仰向けになる。
これ以上、広野みゆちゃんの声を聞きたくない。
そこから連想される千草の穏やかな顔とか、気持ちとか、そういうのも今は頭のなかに入ってきてほしくないの。
大好きなボーカルの声とバックの楽器の音が部屋いっぱいに広がる。それでようやく広野みゆちゃんの可愛い声は聞こえなくなった。
愛なんて つくりもの でも
恋なんて かざりもの でも
永遠はいらない と明日の夜
それだけは ホンモノ
i need someone's honey
「~~~~ ♩」
好きなバンドの好きな曲を口ずさむと、少しだけ陽気な気分になってきた。
それなのに、
「青、うるさい!しずかにしなさい!」
階段の下から大音量の音楽よりも大きなお母さんの声が聞こえてきた。