ねえ、理解不能【完】
そんなこんなしているうちに、川瀬君がきた。
誰かさんと違って気だるげな雰囲気は一切なく、なんだか朝から輝いてる。
本当に爽やかだな、なんて思いながら川瀬くんを見ていたら、パチリと目が合ってそらす隙もなく、その顔がぱあっと明るくなる。
「白崎、おはよう」
つられて、私まで明るい気持ちになっちゃうの。川瀬くんの魔法だなって思うよ。
千草が原因のモヤモヤに蓋をして、いつも通りの私になれてるはず。
「おはよう、席おかりしてました!」
いそいそと川瀬君に席を譲る。
そうしたら、なぜか川瀬君は、首をかしげて。
「.......うん?」
今の会話のどこに疑問な点があったのかな。
私も首を傾げてしまう。
川瀬くんは、私がたった今あけた椅子に座って、上目で見上げながら再び口を開いた。
「白崎、まだ元気ない」
ドキリ、と心臓がはねる。
川瀬くんが首を傾げた理由。
弱い点をつかれてしまうと、どういう顔を作ればいいのか分からないし、困る。
取り繕った明るさの後ろに隠した灰色の感情は川瀬くんにはばれていたみたいだ。頑張って蓋をしたのに、少しショックだ。
だけど、川瀬君、少し察しがよすぎじゃないかな。妃沙ちゃんでさえ、言ってこなかったのに。
ちょっと恐怖すら感じたよ。爽やかだから尚更だ。