ねえ、理解不能【完】






こなくていい、なんて他人事みたいに言っちゃって。



モテる千草には青春がこないなんて分からない悩みにきまってる。

どうせ、私は恋もしたことないような女ですよーだ!心の中で悪態をついても、虚しくなっただけだった。



千草なんてオトメ心も分からないくせに、無駄にモテちゃって。少しは私の枯れた恋愛事情もなんとかしてくれればいいのに。






「……何拗ねてんの」





知らぬ間に尖っていた唇と膨らんでいた頬。

千草の手が伸びてきたかと思ったら、頬を人差し指と親指で挟んでつぶされた。


私は千草に潰されないように、めいいっぱい頬に力を入れる。

今いきなり指を離されたら、勢いよく吹き出してしまうだろう。それで千草の顔につばとか飛んじゃって.......うん、その作戦もあり。







「ブス」




ふはっ、て千草が目を細めて笑った。



ブスって言って笑うなんて最低だ。不細工にしているのは千草なのに、よくそんなこと言える。


私は、睨みながら頬をしぼめてべーって一度舌を大きく出してやった。



そうしたら、あらぬことか舌にデコピンならぬ舌ピンをしてきた千草。


私はすぐさま引っ込めて、大袈裟に痛いふりをする。人の舌に危害を加えるなんて、おかしい。千草の短所にこっそり追加しておくことを決める。



千草はわたしの舌を攻撃した人差し指を空気中で乾燥させるみたいにパタパタと振る。


バイ菌扱いされたみたいで腹が立って、私も仕返しみたいに、舌を乾かしてみた。

千草の手に強烈な細菌がついているかもしれないから、一応ね。



千草はそんな私を見て、
また可笑しそうに目を細めた。





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