ねえ、理解不能【完】
「心配してくれてありがとう」
「したいからしてるだけだから、ありがとうはいらないけど、もらっておきます」
爽やかなオーラを惜しみなく放ちながら、川瀬君が優しく笑う。
隣で、男前ね、なんて呟く妃沙ちゃんの声が聞こえて、私は頷いておいた。
正直なところ今の私は、本当に弱ってる。
聞いてくれるってさっき言っていたし、本当に相談してもいいのかな。さっきのがたとえ社交辞令みたいなものだとしても、気付かないふりをして頼りたいくらいには川瀬くんのことを信頼していて。
「...あの、川瀬君。じゃあ、話、聞いてくれる?」
恐る恐る、迷惑は承知でお願いする。
川瀬君は、一度吃驚したのか目を大きくしたあと、すぐにいつものように爽やかに笑って。
「うん。今日の放課後でも聞くよ?頼ってくれてありがとう」
ありがとうはこっちなのにそんなことを言って、嬉しそうに目を細めた。
「ありがとう.......!」
断られなかったことにほっとしたのと、妃沙ちゃん以外に頼れる人を見つけた嬉しさとで、自然と笑みがこぼれてしまう。
実は男の子の意見も聞きたかったんだ。
千草が男で私が女だから、やつの気持ちが分からないのかもしれない、なんて思ったりもしていたから。
もしかしたら川瀬くんに相談することで、千草との問題も解決するかもしれない。
そう思うと明日に希望がもてるよ。