ねえ、理解不能【完】
「その、ね。千草と喧嘩したっていっても、私が一方的に拒否されてる感じなんだけど。自分が千草に何したか全然分からなくて、謝るにも謝れなくて」
「旭、彼女できたから、とか?広野さんだっけ?あの子も有名じゃん。美男美女って友達が言ってたの聞いた」
美男美女?
そんなの知ってる。
でも、千草ってそんなにかっこいい?
爽やかな川瀬くんに対して、はじめてイラッとしちゃった。それがなんでなのかは分からないけど、自分の中の黒い気持ちを誤魔化すように話を続ける。
「でも、今までは彼女がいても、そんなことなかったのに、今回だけなの。何か聞いてもお前には関係ないって言われるし、冷たい態度とられるし、謝ったところで仲は戻らない気がして.......」
「本当に何もしてないんだよね?」
「してないよ!.......って思ってるけど、もうなんか、自信ない。どうしたら仲直りできるのかなあ。ていうか、千草が何考えてるのか知りたいのに全然分からないの」
どう思う?の意味を込めて、川瀬くんを見る。泣きたいけど、この人の前では泣かない。その線引きはしっかりできるくらいの冷静さはある。
川瀬君は唇をぎゅっと結んで、悩んでくれてる。
今頃、千草と広野みゆちゃんは何してるかな。
また千草の家の前でしゃべっているのかな。
ふと教室の窓の外に目をやると、空は夕焼けのオレンジ色と昼間の水色をわけあっていて、まるで私のこの複雑な気持ちを表しているみたいだった。