ねえ、理解不能【完】
川瀬くんとは今日から帰ることになった。
「早速、作戦開始ね」と川瀬くんは共犯者みたいに笑ってくれて、戸惑いながらも申し訳ない気持ちは少し和らいで。
家まで送るよ、なんて言いながら、しっかり車道側を歩く感じ。川瀬くんが彼氏だったら素敵だな、なんて邪なことをなんとなく思ってしまった。
彼女に家まで送らせる誰かさんとは大違い。
「千草なんて、広野みゆちゃんに送ってもらってるんだよ。最低だよね」
どさくさに紛れて千草の悪口を言ったら、川瀬くんは困ったように笑ってた。
本当に色んな笑い方をする。
「好きの違いじゃない?」
「どういうこと?」
「どういうことだろーね。でも、うん、最低だね、あの人。色んな意味で」
もう完全に夕焼けに支配された空の下を、二人で歩く。
千草以外の人と歩く通学路に違和感があるけれど。それでも、川瀬君との帰り道は結構楽しいって感じてる。
「白崎、今まで付き合ったことはないの?」
「ないの、お恥ずかしいことに」
「なんで、別に恥ずかしくないけど」
「.......そうかな。川瀬くんは?」
「俺?うーん、俺は人並みって感じ」
ちょっと濁してる感じは、たぶん嘘だ。
千草とはタイプが違うけれど、彼がモテないはずがないもん。