ねえ、理解不能【完】
「川瀬君、本当にごめんね」
じゃあ、と手を軽くあげた川瀬くんに謝る。
「そこは、ありがとうの方が嬉しいんだけど」
「ありがとう!ごめ、あありがとう!」
ごめんと言いそうになって、焦ってありがとうを繰り返したら、噛んでしまった。
ふはは、川瀬君が目をぎゅっと細めて笑う。
やっぱり爽やかだ、私もつられて笑顔になってしまう。
「白崎ってやっぱりいいよね」
「えっ、い、いいかな?嬉しい。ありがとう?」
「.......旭はバカだね」
「それがね、千草ってだいたい眠そうにしてるくせに頭はいいんだよね」
「違う。うん、でも、そっか。かなりモテてるくせに白崎には臆病なんだ」
「うん?」
「なんでもない。白崎は知らないままでいて」
もしかしたら、川瀬くんも賢い人なのかな。それか私の頭が悪いのかも。
会話が成り立たなかった。というか、川瀬くんが言ってることが理解できなくてぽかーんと口を開けてしまう。
そんな私に川瀬くんは、ふっと力を抜くみたいに笑う。
「じゃあ、明日からも作戦続行ね、白崎」
ばいばい、って川瀬君が手を振ったから、私も振りかえした。