ねえ、理解不能【完】
そんな私とは反対に、千草はぎゅっと唇を結んで何かを堪えてるみたいにしかめっ面。でも、今は気にしない。
しばらく嬉しさに浸っていた私にしびれを切らしたのか、私に向けていた顔をそむけて、再び歩き出した。
私は、立ち止まったままだ。
だけど、千草に無視されなくて、勇気がもてたことは確かで。
言うなら今だ、と思った。戻れるなら、きっと今。一縷の望みをかける場所、きっと間違ってない。
私だけが仲直りに必死で、千草が私ともう一度前みたいに戻りたいってあんまり思ってないことは明白なんだけど、もうそんなことを気にしている場合ではなくて。
プライドは昨日に忘れてきちゃった。
速足で遠ざかる千草の背中を追いかける。
千草は私が追いかけていることに絶対気づいているくせに、気づかないふりをして、振り返ることもなく、前を向いたまま歩いてる。
気づかないふり、したって無駄なんだから。