ねえ、理解不能【完】



「ねえ、千草!」


気づいてないふりするなら、そんなふりできなくするだけだよ。


ドクンドクン、心臓の音。さっきよりもけたましく鳴っていて、煩い。






だけど、やっと追いついた。




千草の学ランの裾をぎゅっとつかむ。久しぶりに香った千草の柔軟剤の匂い。懐かしい、って思うことが悔しい。手が震えてしまう。千草にもきっとバレてるけど、今千草から手を離してしまうことの方が嫌だった。




「なに、」


掠れた低い声が耳に届く。

千草が歩くのをやめる。




「一緒に学校行きたい」

「........」

「行かないって言ってたけど、行きたい。......千草といたい」



千草は私の手を払いよけることはしなかったけど、ちっともこっちを向いてくれない。


千草といたい、そんなことを口に出したのは、初めてだった。小さい頃からずっと一緒にいたけど、言わなくてもそばにいてくれたから。



心臓、静かにして。それから、熱くなる頰、はやく冷めて。

自分の体なのにコントロールすることができなくて、困る。





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