ねえ、理解不能【完】
私と千草の間に重い沈黙が流れる。
その重圧に押しつぶされそうになりながらすぐ近くにある千草の背中を見つめる。
絶対に離さないって思っているのに、学ランの裾をつかむ力が弱くなってしまう。
.....千草、何か言ってよ。
だけど、いっそ断るなら、何も言わないで。私の手を強引に振り払って行ってしまってほしい。
「千草、」
それでも、ねえ、お願い。
私の指先から触れている部分を通して、千草の心に伝えたいことが全部伝わればいいのに。
ーー これ以上、おいていかないで。隣にいて。
本当のことをいうと、願いはこれだけなの。
手を出すのがはやい千草も、私が思っているよりたくさんの女の子にモテている千草も、ぜんぶいらない。
幼なじみの千草しか、いらない。
だから、そばにいてほしい。
「俺といたいの」
「.......さっき、そう言った」