ねえ、理解不能【完】
「あのさ、白崎」
「ん、なに?」
「俺が、なんで一緒に帰りたいって言ったか分かる?」
「へっ、」
「白崎が挙動不審になったのって、俺の気持ちに勘づいたからでしょ?」
「.......?!」
「....たぶん、あってるよ、俺の気持ち」
一歩私に近づいた、川瀬くん。背を少しだけかがめて、顔を私の方によせる。
その唇が、思った通りのかたちをつくったから、あ、と掠れた声をだしてしまう。
「ーー好きなんだ」
至近距離であわさる瞳に、私はどうすればいいか分からず、固まってしまった。
染まる頬。川瀬くんの頬も赤色なのに、彼はまだ余裕があるのか、ふ、と力が抜けるみたいに笑って屈んでいた背を戻した。
それからもう一度、口を開く。
「俺は、白崎のことが好き」
いつもの爽やかさはどこにもなくて、真剣そのものの川瀬くんの表情が、これは冗談なんかじゃないってことを証明している。
川瀬くんは少しだけ恥ずかしそうにして、自分の前髪をなでた。