ねえ、理解不能【完】
「字幕、どうすんの」
「いらない」
「本当に?」
千草は不審そうな顔を向けてきたけれど、私は適当に頷いておく。
字幕なしの映画なんて何を話しているかわからないことは明らかだけど、気まずい雰囲気の中、流れるように返事をしてしまったから、もういい。
「青、なんか変」
「.......普通だし!」
「……さっきの話、本気にしたならごめん」
「はあ?」
「ーー広野?のほうがお前よりかわいい、きっと」
「さ、最低だ!」
.......千草にはお見通しみたいだ。
何がって聞かれたら、答えられないけれど。
私は怒ったふりをしてそっぽを向いたけれど、本当は心の中ではどこか安心していた。
良かった、それでこそ千草だ。
わたしを遠回しに可愛いっていう千草なんてどうかしてるもん。
千草はDVDをセットして、私が座っているベッドの上に腰を下ろした。
その重さ分すこし沈むベッドの音がやけに響く。
それから、すぐに映画が始まった。