ねえ、理解不能【完】






ドキドキ、けたましく鳴る心臓の下にもちゃんと理性というものはあって。



ときめきはするけれど。
川瀬くんのこと、かっこよくて素敵だなって思うけど。





「......あのね、私、恋がまだどんなものか分かってないの」




自分でも不安を抱いているんだけど、実は、私はまだこの歳になっても恋を知らない。

彼氏がほしいって言っているだけで、本当のところなんでほしいのかも分からない。白状するけど、かなり適当に言っていた。

少なくとも自分の認識できる範囲では、恋愛対象として異性を見たことがないし。


だけど、憧れはある。

だって、恋する人はみんな楽しそうだ。
その楽しさを経験してみたいっていう気持ちはある。





高校に入りたての頃、まだ好きな人できないなんて遅いよね、って千草に相談したら、そんなの人それぞれだから、って言ってくれて、その時だけは安心していたけれど。




…..なんて、だめだ。今千草のことを考えるのは、いくらなんでも川瀬くんに失礼だよね。




彼氏欲しい彼氏欲しいって言っていたくせに、いざそのチャンスが自分に巡ってくるとどうすればいいのか分からない。



興味本位に川瀬君の告白を受け入れるのは、失礼だと思うし。でも、断り方も分からない。断るべきなのかも、よく分かってない。




ドキドキが止まらないし、分からないことしかないしで途方にくれてしまう。



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