ねえ、理解不能【完】
付き合って少したってから、川瀬くんは私のことを青って呼ぶようになって、私も川瀬くんのことを下の名前で呼ぶようになった。川瀬くんの提案だ。その方が距離が縮まるから、って言っていた。
『ゆうって呼ぶのちょっとだけ緊張する』
『そろそろ慣れてよ。うーん、じゃあ練習しよっか』
『.......練習?』
『うん。ゆうって呼んでみて。電話だと呼びやすいでしょ?』
千草以外の男の人を下の名前で呼ぶなんて初めてだったから、はじめは照れくさくてなかなか呼べなかったけれど、そんな私にも川瀬くん__ゆうは、嫌なそぶりをひとつも見せずに、リードしてくれる。本当に感謝しかないの。
まだ、ゆうのことが「好き」かどうかは分からないけれど、夜、電話を切るときに『おやすみ、青』って伝えてくれるゆうの声は好きだなって思う。
そういうふうに、ゆうの好きなところを見つけていかないと、って思ってる。