ねえ、理解不能【完】
手を伸ばして、千草のカッターシャツの裾を掴んでみる。
横になって千草の顔を見ると、鼻の高さが際立つし、すっとした顔の輪郭も綺麗なことに気づく。
.......本当に千草って整った顔をしてるね。
千草は、 掴まれていたシャツの裾を私から解放して、映画へと視線を戻した。
「……警戒心すこしはもてねーの」
「え、なんて?全然聞こえなかった」
「なんでもない、」
「嘘だー、絶対何かあるじゃん!」
「.......元カノもよくベッドで寝てたなーって思い出しただけ」
「なにそれー!経験自慢やめてよ、イヤミじゃん、バカ千草!」
「は、馬鹿はどっち?」
千草とは小さい頃からずっと一緒にいたけれど、私と違って千草は付き合ったこともあるしキスもその先もきっと経験済み。
それでも、千草は私といることをやめなかった。
いつだって私を甘やかして、ワガママも理不尽もぜんぶ許してくれる。
最近はどうしてか知らない千草が増えてきて、いつか置いていかるかもしれないなんて不安を感じてしまうけれど。
.......あ、これなのかもしれない。
不意にわたしの中で生まれる違和感の正体はもしかしたらこれが原因なのかも。