ねえ、理解不能【完】
「そいつが、直接自分で言えばいいのに」
千草が馬鹿にするように笑い混じりで言うから、私は唇を尖らせる。
千草の意見はご立派だけど女の子は、なかなかそんな勇気なんてでないものなの。
だからこの世界にはラブレターとかそういうものが存在するし、それさえも自分で渡せない恥ずかしがり屋の女の子もいるんだよ。
千草は全然オトメ心が分かってない。
全くだ、と呆れた顔をつくってみせたら、盛大にため息をつかれた。
つきたいのはこっちだ、ばか。
さっき、千草にもちかけた話。
千草のことが好きな子がいて付き合いたいとのことだ、と。
それまで千草の家でふたり、やつが借りてきたDVDを鑑賞していた。
それがすごくおもしろくて、私も千草も見終わったあとは上機嫌だった。
ここが面白かったよね、ここはひやひやしたな、なんて感想を言い合っていた直後に、
空気も読まずに私が千草いわく‟めんどくさい”話をしたから、不機嫌になるのは当たり前と言えば当たり前なんだけど。