ねえ、理解不能【完】
「ねえ、上手く作れたら誰かにあげる?」
妃沙ちゃんが、慣れた手つきでりんごを切りながら何気なく聞いてくる。
私は、パイ生地を妃沙ちゃんに言われた通りに重ねているところで。
正直なところ、全部妃沙ちゃんと二人で食べようと思っていたから、誰かにあげるなんて考えてなかった。
「妃沙ちゃんは誰かにあげるの?」
「私はあげないよ。...あげても、戸惑いそうだから」
「え!妃沙ちゃん、彼氏できたの?!」
「違う、違う。恋人じゃないよー。いつか、青にも話すね」
妃沙ちゃんが少しだけ遠くを見つめるような目をしたから、私はこくこくと頷く。
そういえば妃沙ちゃんの恋愛の話はあんまり聞いたことなくて。告白を断ってることと、今付き合ってる人がいないってことくらいしか知らなかった。
でも、きっと妃沙ちゃんみたいな美人で優しい人に想われる男の子はすごく幸せ。