ねえ、理解不能【完】
「それで、青はどうなの?」
「え!わたし?」
「ふふ、川瀬くんにはあげないの?」
妃沙ちゃんのからかうような微笑みに、私は思わず目をそらしてしまった。
妃沙ちゃんが口にするまで、まったく頭になかった。ゆうのこと。
最近は前よりもためらいなく触れてくるし、ぎゅっと抱きしめられることも増えた。
あれから何度か二人でデートにもいったし、テスト勉強なんかも一緒にやったりして。
「青ちゃーん?聞いてますか?」
妃沙ちゃんの声に、私は一度手の動きを止めて、顔を向ける。そうしたら、からかうように悪戯っ子みたいな顔をしていた妃沙ちゃんは、少し驚いた表情になって。
「.....あげたほうがいいのかな」
弱音を吐くみたいにそう言ったら、妃沙ちゃんは、青、と優しく私の名前を呼んだ。
「あげたほうがいいか、じゃなくて、あげたいかどうかだと思うよ」
あげたいか、どうか。それは、何にも考えてなかった。
思い悩む私の横で、妃沙ちゃんはお鍋にりんごを入れる。