ねえ、理解不能【完】





そういえば、



妃沙ちゃんの懐かしむような声に、私は顔を向ける。もう、いちご大福は3個目に突入していた。妃沙ちゃんは、ゆっくりとまだアップルパイを食べている。



「昔、一緒にガトーショコラ作ったの覚えてる?まさか、青がお菓子作りがあんなに苦手だって思わなかったから青の分はほとんど任せてたけど、あれ盛大に失敗したよね」


「私もあれは吃驚だったよー、自分があんなに料理が苦手とは思わなかったもん。かなり焦げちゃったよね。今日は、妃沙ちゃんにほとんどやってもらってよかった」


「ね、焦げっぷりが面白かったなあ。で、それを青は旭くんにだけあげたんだよね。その次の日、旭くんお腹壊しちゃって」


妃沙ちゃんが目を細めて笑ってる。

私は突然、話題にあがった千草の名前に戸惑ってしまったけれど、平然とした風に、笑って誤魔化した。


「千草のお腹が弱すぎだったんだよ」


作った日の夕方に千草の家に持っていったことを思い出す。たくさんあったものを全部千草にあげたの。あんまり喜んでなかったな、そういえば。でも、あの時は、なんだか千草にあげたい気分で。

次の日、お腹を壊した千草をお見舞いにいくと、お前のせい と 美味しかった を両方伝えてきて、意味不明だった。



「でも、あんなに焦げたガトーショコラよく全部食べてくれたよね」


妃沙ちゃんの言葉に、私はゆっくりと頷く。



< 236 / 450 >

この作品をシェア

pagetop