ねえ、理解不能【完】
「ねえ、青。今、旭くんのことどう思ってる?」
妃沙ちゃんの、真っ直で凛とした声。
その質問には、うまく答えられないけれど、
「嫌いになりたい、って思ってる」
縋るように妃沙ちゃんを見つめてしまう。
甘いお菓子の風味と、相容れない汚い感情ばかりが、千草のことを考えると生まれてしまう。
「じゃあ、川瀬くんのことは?」
汚い感情から目をそらさせてくれて、私を傷つけない存在。だけど、焦げたガトーショコラなんて、あげれない。そういう存在。
「......好きになりたいの」
「ならないといけない、じゃなくて?」
「それは、分からない。うー、妃沙ちゃん、私どうしたらいいかな?」
結局、妃沙ちゃんに甘えてしまうよ。妃沙ちゃんは、よしよしって背中をなでてくれた。ほんもののお姉ちゃんみたいだ。