ねえ、理解不能【完】
好きだ、好きだ、好きだ
嫌いになりたいのに、なれなかった。認めてしまったら、ぜんぶ、ぜんぶ、この気持ちにたどり着く。
黒い感情の正体も、涙の理由も、もう何なのか分かったの。
この苦しさは、恋の真ん中にある。
「.......好、き」
だけど、もう手遅れだ。
ーー『はやく、俺を好きになって』
ゆうの顔が頭に浮かぶ。
輪郭は不明瞭だけど、嬉しそうに笑った顔ばかり思い出す。
告白に頷いたのも、手を握り返したのも、背中に手を回したのも、ぜんぶ、私。
後悔なんて、した後にはじめて形になるんだ。
私のことを、青って無防備に笑って呼ぶ千草も、呆れた声で呼ぶ千草も、切なそうな瞳で呼ぶ千草も、どの千草も、
どうしたって、もう、私からは遠い。