ねえ、理解不能【完】
「ごめんね、千草くん。もう!本当に誰に似たのかしらね?」
いつの間に外へ出てたんだろう。
後ろから聞こえたお母さんの呆れた柔らかい声。さっきの鬼みたいな声はどうしたのさ。
千草は今までずっと私を睨んでいたくせに、優しい目でお母さんに視線を移して、はは、と愛想笑いをした。
はは、ってダジャレ?
全然面白くないんですけど、
それに何その態度の変わりよう。
遅れた私が悪いのは百も承知だけど、ちょっとムカムカしてきちゃう。
だけどその苛立ちを千草にあてるのはダメってわかってるから、私はくるりと勢いよく後ろを振り向いて、唇を尖らせた。
「お母さんは黙ってて」
「あら、何?なんであんたが怒ってんのよ?」
「……千草!もう行こう!」
お母さんに一度思いっきり舌を出して、ふいっと顔をそむける。
それから、早足で歩き出した。