ねえ、理解不能【完】
振り向いてくれない千草の背中を見つめる。
千草の学ランの背中の皺を妙に意識してしまって変な気持になった。
皺のはいりかた、なんだかとても艶めかしいっていうか、なんていうか。
……千草、いつの間にこんなに背が高くなったのかな。
すらりとした細身のくせに背中も案外広くて。
最近、千草が部屋で学ランを脱ぐと、カッターシャツの布越しでも分かるくらい、骨とか筋肉のかたち、私とは違う部分に目がいってしまって、無意識に目を逸らしてしまうの。
本当に、いつからだろう。
昔は背の高さだって一緒だったのに。
いつの間にか見上げなければ千草の顔なんて見ることができなくなった。
手も昔に比べたらゴツゴツしているし、足はスラリと長くなった。
それから、顔も。
可愛かった幼い千草はもういない。
繊細さを残したまま男らしくなってしまった。
どんどん私を置いて遠くに行ってしまう千草。
隣にいるのに、時々寂しくなる。
経験値だって、何もかも、千草と私とではもう全然違う。
なんだかそれが無性に悔しくて、やっぱり千草には私のところまで戻ってきて欲しいって思うよ。